『オリジナルバイクを作る!』と題しましたが、工房主は溶接ができません。過去に一度、TIG溶接にチャレンジしたことはありましたが、難しすぎて諦めました。なんでも、一端のフレームビルダーになるには10年の経験が必要とか……。
かくいう理由でRE工房に可能なこと、つまりレストアと塗装、それから組み上げの一部を抜粋して記事として残そうかと思います。写真少なめ長文ですが、ご興味がある方は、ぜひ最後までお付き合いください。古い自転車のレストアをお考えの方の一助になれば幸いです。
#1 フレームの選定
フレーム溶接から始めないのならば、まずは中古フレームの選定から。
新品フレームから再デザインしても良いのですが、大まかな手順は変わりません。それならお金がかからない方が良いですよね。
昨今、古いフレームは中古市場にあふれています。しかもかなり安い。
しかし、安易に手を出してはいけません。
なぜなら、今と昔ではフレーム規格が異なり、補修パーツも限られているから。
フレームを数千円で入手できても、その規格に合うハブやコンポーネント(ビンテージ品)が数万円……、なんてことはザラにあります。巷に転がっているフレームもそんな一つかもしれません。だから安いのですが……。
さらに、「クロモリフレームは頑丈だから古くても大丈夫」とお考えの方が多いようですが、何事にも限度があります。
使用頻度が少なくとも、長期間メンテナンスがなされておらず、(屋内保管であっても)放置状態にあったならば、結露等によりサビが進行します。
サビの多いクロモリ(アルミ)フレームは、カーボンフレームのように突然ぽっきり折れなくとも、剛性が著しく低下します。
クロモリフレームといえど、下り坂では50~60km/hは簡単に出ます。レースなどで使用する場合はそれ以上のスピードになることもあるでしょう。
逆に、お散歩程度のサイクリングならば、フレーム剛性はあまり関係ないかと思われます。
フレーム剛性が著しく低下したフレームだと、その負荷に耐えられず、操作性が大幅に低下します。
工房主も経験があるのですが、突如、ハンドルがガタガタに震えてハンドル操作が困難になります。下り坂でフロントタイヤがパンクした時と似たような状況に陥ります。(*とても危険な上に、後続に自動車がいると恐怖です)
そこまで至らなくとも、フレームの形状が変形してまっすぐ走れなくなったり、チェーン落ちが頻発することもあります。
せっかく時間とお金をかけてレストアするのに、そのようなフレームではすべてが台無しです。
型が新しいフレームならば良い、というわけでもありません。昨今のクロモリフレームはアルミフレームに負けないほど軽量なモデルが増えてきました。1500gを下回るものまであります。
昭和時代に比べて劇的に金属加工技術が向上したこともその一因ですが、クロモリはクロモリ。金属密度は変わりません。
何が変わったかというと、パイプの厚さ。長くなるので詳細は省きますが、とてつもなく〝薄い〟そうです。0.3㎜~0.5㎜といった極薄パイプまで存在するそうです。
当然、サビに弱くなります。下手にサビを削るとパイプが薄くなりすぎて……。
そういう意味で、中古フレームは慎重に選びましょう。
とはいえ、クロモリフレームの経年劣化を見抜くことは困難です。
レストアする立場として本音を言わせていただくと、「乗ってみなくては分からない」「塗装を完全に落とすまでわからない」です。
ただし、手がかりはあります。
塗装が浮き上がるほど下地がサビついている。
BBやシートポストの差込口から内部をのぞくと、地金が見えないほどチューブ内のさびがヒドい。
ホイールをはめてみるとセンターが合わない。
こういう場合は、危険信号です。
フロントフォーク、チェーンステー、ヘッドチューブ周辺が歪に曲がって見える。
ラグ組み部分の段差やTIG溶接の周囲からサビが出ている場合は、完全に赤信号。満足に使用できません。危険ですので諦めてください。
経験則とクロモリ好きのローディ達から聞いた話ですが、クロモリフレームの寿命(金属疲労)はおおよそ10万キロ前後(室内保管)で一致します。パワーがありシリアスなライダーならば3~4年で限界を迎えます。
紹介が遅れましたが、今回のレストア記事のために入手したフレームが上の掲載写真。
メーカー(販売元)不明。タンゲダブルバテットチューブ。
リアエンドが128mm(実測値)ですので、126㎜幅6スピード時代、1980年頃のモデルでしょうか?
ヘッドセット:TANGE VANTAGE
リアエンド:TANGE SR
シートポスト径:26.6mm(実測値)
『#1 フレームの選定』終わり。
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