桜柄に続くRE工房オリジナルデザインになれば……と、軽い気持ちで始めたのですが、非常に困難な道でした。
カモフラデザインの自転車はかなり昔からありました。90年台MTBブームの頃がもっとも多かったでしょうか?
しかし、現代ではあまり多く見かけません。大手メーカーでは、トレック社がプロジェクトワンで製作しているくらいでしょうか?
スペシャライズド社のアレー(限定数あり)も、カモフラ風といえるかもしれません。(塗装の手順的に)
カーボン技術の発達によりスマートになった昨今のフレームよりも、2010年前後の極太カーボンパイプを使用したフレームの方がカモフラがマッチする気がします。
あんなに格好良いのになぜ量産しないのか、RE工房でも挑戦してみました。
TREK社のONEseries 1.5というフレーム。もちろん塗装が容易なアルミフレームです。トップチューブがきしめんのように扁平で、ダウンチューブは極太です。アルミでここまで太いと、横の剛性が非常に高くなります。ダンシングでとてもよく進むフレームです。疲れますが……。
塗装前の光景の一部がこちら……
とてもコンディションの良いバイクです。目につくようなダメージはほぼありません。今回もしっかり重量を計測しています。
実はこのバイク、現在のCINELLIの塗装中の期間だけ(運動不足解消を目的に)入手したフレームなのです。CINELLIの塗装が完了して以降、部屋の片隅でオブジェと化していました。
今回はこのフレームに新デザインの実験台になっていただきましょう。
早速、塗装を除去し、下塗りを始めます。
メーカー塗装の重量は57g。フレームのみでこの重量。結構、重たいですね。
アルミバイクのため、さび止め、塗料の密着性を高める工夫も忘れません。
とんでもないマスキングテープの数です。
下地を作り、新しい色を重ねるわけですが、その境界を作るためのマスキングの数がこんな感じに。五十箇所以上あるでしょうか?
カーボンフレームでも応用できるように〝マスキングテープを先に貼り、アートナイフでカモフラ柄に切り取る〟という安易な選択肢を選ばなかったのがもろに裏目に出ました。(*ナイフをカーボンフレームに突き立ててマスキングを切り取ると、カーボンの表層にダメージが入ります。ぜったいにやらないように!)
カット済みマスキングテープを先に作り、それをフレームに張り付けるという非常に面妖な作業の繰り返しです。
今回は三色カモフラのため、同じことをもう一回……。
大手がカモフラを作らないはずです。非常に面倒くさい。アルミ製MTBならば、ある程度手順を省けます。
塗装後にマスキングテープをはがす作業だけで、優に一時間以上かかりました。
一色塗ったら、一日乾燥。手直ししたら、一日乾燥。
フレームは大きいため、乾燥機に入りきれません。焦らず慌てず、地道な作業が続きます。
乾燥時間に小物の塗装。今回もRADACの時と同様に、色とデザインを統一します。シートポスト程度ならカモフラ柄も苦になりません。塗っては乾燥機に放り込む。作業もはかどります。作っていて楽しかったですね。
ちなみに、トップキャップだけが筆塗りです。残りはエアブラシ(0.5mm)。塗装技術向上のため、挑戦してみました。(*工房主は筆塗りが大の苦手)
実は、塗装後が最も大変でした。
段差です。マスキング処理を行うと、塗装の厚みが段差となって塗装面に出ます。その段差をやすりで擦って削らなければなりません。削りすぎると、下地が見えるので塗装のやり直しです。この作業だけに丸一日費やしました。
いくつか反省点がありました。
まず、塗装のムラ。マスキングが甘かったのか、最も色の薄い箇所に濃い色が飛んでいます。上の写真ではかなりわかり辛いですが、七枚目のトレックマークの右の部分など、数か所に若干ムラが出てしまいました。
下の太陽光での写真で色ムラを確認できるでしょうか? 数十キロも走れば、付着したホコリの方が目立つ程度ですが……。
TREKのロゴの拡大写真。よく見ると下地のカモフラ柄が透けて見えます。
実はこれ、透けているわけではなく、ごくわずかな塗料の厚みが、メタリック塗装の光を別方向に反射しているだけなのです。
メタリック塗装でなければ、表に現れなかったミスです。おそらく避けようのないミスでしょう。しかし、ダウンチューブロゴはメタリック塗装が一番格好良いので難しいところです。
フロントフォークとチェーンステーのロゴはさりげなく。工房主の好みです。
自転車に限った話ではありませんが、至る所に自社ブランドロゴを張り付けるデザインはどうなのでしょう?
完成です。その前に、重量チェック。
おやおや? フロントフォークは1gの微増。これは想定内ですが、フレームが大幅に軽くなっています。これだけの塗装で17g増ということはないと思うのですが……。工房主の推測では、CINELLIよりもやや軽い20g~25gぐらいだと思います。純正塗装をすべてはがした時、BBとヘッドチューブのマスキングをはがし忘れたのかもしれません。
とにかく、これで完成です。ギャラリーを作りましたので、よろしければご覧ください。
一流ブランドのハイエンドクラスにも負けないデザイン、とまでは言いませんが、目立つという意味では全く引けを取らないと自画自賛しております。ここまで細かいカモフラ柄はなかなかぉ目にかかれません。工房主の塗装技術については、今後に期待、といったところでしょうか?